留萌市の医療ネットワーク


「るもいコホートピアって何ですか?」
高齢社会の地域の課題を
お年寄りが暮らす地域で研究し
その成果を地域に還元する活動です。
お年寄りの健やかな生活を支えるためには、
身体と環境の双方の情報がとても重要です。
だから、地域ぐるみの理解が必要なのです。
地域の身体と環境に関する情報が蓄積すると
たとえば、医療人の育成や臨床研究に役立ちます。
もしかすると、高齢社会の未来が見えるかもしれません。
高齢社会の理解を推進する地域「留萌(るもい)」で一緒に研究しませんか。


1.るもいコホートピアの背景と概要

(1)はじまり

留萌(るもい)は、北海道の北西部に位置し、1 市5 町1 村が南北155km 東西67km に分布している地域です。人口は1 市5 町1 村合わせておよそ6万人です。この広大な地域の基幹病院は留萌市立病院ひとつです(図1)。留萌市はこの地域の南部にある人口約2 万5000 人の留萌地域の中心都市です。北海道の大規模出先機関である留萌振興局と重要港湾を有しています。留萌市が運営する留萌市立病院は、他の公立病院と同様に医師不足と赤字に苦しむ中規模の病院です。私たちは、地域の基幹病院の疲弊が、地域住民の健康を守る上で危機的状態にあることを大変心配していました。けれど、医師不足をすぐに解決する力も方法も見つかりません。なぜ地域医療がこれほどに疲弊してしまったのか。報道では、研修医制度により、地方を目指す医師が減り、大都会に偏在することがその原因であると伝えています。一方で、留萌市立病院を必死で守り地域の医療を維持していこうとする多くの関係者の努力は絶えることなく続いています。私たち医学研究者も何かお手伝いできることはないか、同志を募って考えました。そして、研究を地域で行うことによって地域医療にほんの少しでも貢献できないかと考え始めました。

図1

臨床疫学という研究分野があります。現場の医療に直結する課題を研究する学問です。地域医療に必須の研究分野です。しかし、臨床疫学は日本ではあまり盛んではなく、地域医療に必要な情報が不足していることが次第に明らかになって行きました。さらに、高齢社会の変化に関する研究報告を検討することにより、地域固有の問題の抽出は、地域医療に有用であること、そして地域の問題を整理し、課題解決のスキームを提案することは、一地域のみならず同様の問題に直面している国内外の他地域にも活用の可能性があることが明らかになって行きました。ここまでの準備に3年ほど費やしました。そして有志を募って、地域にあって地域の研究活動をする仕組み作りを目指し、平成21年7月2日に実施主体であるNPO法人るもいコホートピアが誕生し、同年7月11日に活動の拠点である「るもい健康の駅」が開設されました。本活動の開始は、北海道や留萌市の多大な支援の賜物であります。ここに深く感謝申し上げます。以来、るもい健康の駅をベースに地域の課題を地域で研究し、その果実を地域に還元する活動「るもいコホートピア構想」に取り組んでいます。

(2)橋渡し研究

研究者には社会貢献と成果の社会への還元が常に要求されています。研究には税金を使うのですから当然のことです。研究の社会貢献へ向けて、国や自治体レベルで研究成果を実験室から社会へ届ける橋渡し研究が推進されています。「るもいコホートピア構想」は、基礎研究者が持つ研究ノウハウを用いて地域の課題にアプローチするという意味で、橋渡し研究の新しい形です。医学研究の目標は、人々の健康に貢献することです。その目標を達成する方法として研究成果を求める努力を続けることが医学研究者の日常です。けれど、少し立ち止まって考えてください。高度な研究を実施できる研究者には、それを実現するすばらしい専門能力があります。その能力の一部を地域に振り分けていただき、地域の課題解決に応用していただけるならば、おそらく地域の課題は今より整理されるのではないでしょうか。すなわち、研究成果ではなく研究プロセスを地域に導入することで地域医療を支援しようというアイデアです。さらに、地域で現地の方々とふれあいながら、お互いが学び合う輪ができOJTにもつながります。ひとづくりにも有効であることが期待されます。これらの活動をひとくくりにして、私たちは「るもいコホートピア構想」と呼んでいます。地域というフィールドには無限の研究課題があります。多くの研究者にとって魅力的な課題の宝庫です。私たちは外部の研究者による留萌での研究を支援することで外部研究者が留萌を訪れてくれるのではないかと考えています。さらに、調査研究した情報を蓄積し利用しやすい形に整理することで、地域医療の研究を通じた医療人の育成にも応用できるのではないかと考えています。「研究」というキーワードから派生した活動をひとつひとつ実行することが私たちの活動なのです。

(3)地域の高齢化

住み慣れた地域で安らかに暮らしたいと願うのは実に自然な心模様です。優しげで麗しい響きを持った言葉です。けれど、地域の実情にはそれだけでは捉え難い深さ複雑さがあります。住み慣れた地域で長く暮らすことを望む方の中には、経済的に引っ越すことができないお年寄りもたくさんいます。公営アパートに長く居住しているのは、そこに住みたいのではなく、他の選択肢を持たないという実情によることもあります。さらに、核家族化や町内の疎遠など日本が迎えている変化にも、高齢者は直面しています。これらは、医療の問題とは一見かけ離れているように見えますが、心身ともに健康でなければ健やかな老後を過ごすことはかないません。地域の高齢者を考えるとき、まさに地域ぐるみの理解が必要なのです。
高齢社会は、近未来ではなく、すでに到来しています。日本の多くの地域で、すでに高度の高齢社会を迎えています。地域での高齢化には、単に人口の減少や、生産人口の偏在などに加え、地域の発展の歴史や行政施策の足跡が大きな影響を与え、個々の地域における高齢者の生活に影響を及ぼすことが次第に明らかになってきました。たとえば、都市計画と医療計画は、行政では別々の部署が担当しますが、高齢者にとっては買い物の利便性と栄養状態はコインの裏表のように関連しています。地域での高齢者の健康づくりに関する研究とは、これらの要素を取り込みつつ行う研究です。そして課題を抽出したその地域、すなわち現場で、課題の解決に向けた取り組みを試みることが重要と思われます。地域の事情に即した課題が判明したなら、その場で小さくてもいいから課題解決を提案すべきと考えています。調査の結果をコンパクトにまとめて現場へ還元するまでが一連の作業です。

(4)世界のニーズ

高齢化により社会の構成員の年齢が大きく変貌することは、社会そのものが変貌することを意味します。高齢社会は、われわれが今まで経験したことのない社会なのです。しかし、現在の日本は高齢者の生活を受け入れることが可能なシステムとは言い難い。課題だらけです。たとえば横断歩道の青信号の長さは誰を基準に決めたのでしょうか。歩くことに不自由のない壮年の方を基準にしたのなら、横断しきれないお年寄りがいてもおかしくありません。高齢社会が到来しているのに、社会は高齢者に対応していないのです。コストをかけずに、高齢者にも安心の工夫が、家屋や道路はもちろん医療などの社会システムにも必要なのです。そして、これらの要望は日本限定ではありません。
高齢社会は、日本だけに舞い降りてきたわけではありません。日本は、たまたまトップランナーであるだけなのです。トップランナーは、孤独ですが、先頭を走ることはやることはすべて一番とも言えます。高齢社会で起こることを先んじて学びその対応を開発することは後から来る諸外国へノウハウを提供できることを意味します。また、高齢化は先進国にだけ生じているわけではありません。東アジア、南アメリカ、アフリカでも着々と高齢社会は到来しつつあります。発展途上国が迎える高齢社会は、日本よりもはるかに深刻であることが予想されます。日本は、社会インフラが高度に充実してから高齢社会がやって来ました。社会インフラの整備途上である中国やインドが迎える高齢社会は、まだ家もないうちから大雨に襲われるような状況が心配されます。高齢社会を生き抜くノウハウは世界中が必要とするものになります。日本が世界に範を示す局面ではないでしょうか。

(5)人に関わる研究

地域で高齢者の課題を探求するという作業は、人を研究対象とすることを意味します。人を研究対象とするためには、①倫理性の確保と②住民の理解の獲得が必須です。この部分をクリア―するのは、多くの研究者にとって時間とエネルギーを要します。「るもいコホートピア」では、人に関わる研究をスムーズに行える体制を整えています。倫理性の確保には、NPO法人るもいコホートピアが事務局を担当する倫理委員会が審査します。この倫理委員会は、文部科学省、厚生労働省、経済産業省のガイドラインを満たしています。さらに、留萌で行われる研究を審査するのですから審査委員は全員留萌在住の方です。地域の皆さんの了承を得るということは、地域の伝統を尊重することでもあり、住民の理解と協力につながることが期待されます。
地域で研究を展開するときに、よそ者にとってのもうひとつの課題は、研究に着手するためにはどこの誰に相談すれば良いのかを知ることです。道案内が必要なのです。いつも留萌で研究を行っている「るもいコホートピア」は、即答できます。どこのだれに会えば良いのか。協力を得るときには、どなたに相談すべきか。生体サンプルの採取と保存を支援できる体制も整えています。わたしたち「るもいコホートピア」は、るもい健康の駅におります。いつでも顔の見える存在として留萌の皆さんに対応させていただいております。これらの活動から、研究者がこの地域で研究することを強力に、そして親身に支援します。研究フィールドを整備してお待ちしております。

2.るもいのコホートピアの研究体制

(1)研究の仕組み

実施母体であるNPO法人るもいコホートピアと北海道と留萌市の行政官が常駐するコホートピア推進室が一体となって活動しています。研究の実施や支援は、NPOのメンバーが個々の専門性や個性を活かして担当します。行政機関であるコホートピア推進室は側方支援を担当します。NPO法人るもいコホートピアの理事は、旭川医大吉田学長(旭川医大眼科学教授)、留萌市立病院笹川院長(札幌医大臨床教授)、萌福祉サービス水戸会長(留萌ライオンズクラブ会長)、留萌市立病院脳外科多田部長(北大客員教授)、国立保健医療科学院佐田上席研究員(北大客員教授)、札幌医大小海(フロンティア医学研究所病態情報学教授)が勤めています。現在は、小海(筆者)が理事長を担当しています。法人を構成する社員と監事は、留萌市を想う有意の青年たちと留萌市の有識者より構成されています。

(2)研究課題

高齢者の健康を脅かす疾患の多くは生活習慣病です。生活習慣病のはじめから重篤な脳卒中や認知症などの予防・発症後の経過まで各種の調査研究を行っています。この地で研究を継続実施することで留萌地区を洗練された研究フィールドに構築したいと考えています。そのノウハウを外部研究者に無償で提供することを目指しています。また、お金と人はないけれど継続的な調査研究を可能にする工夫の研究もしていいます。以下、実施している調査研究を簡単に紹介します。括弧内は臨床疫学上の研究の種類です。
①生活習慣病リスク者早期検出システムの研究開発および介護リスク早期検出事業(連続横断研究):高齢者の疾患や介護要因の遠因であるメタボリック症候群や糖尿病を簡便に検出するアンケートの開発とその応用による調査研究です。平成21年に第1次調査を行いました。毎年異なる年齢層に実施していきます。留萌市の55歳から64歳のすべての方4300名にアンケートを送付し、1915名(回収率44.7%)の回答をいただきました。この調査から実に215名の生活習慣病や糖尿病のリスク者を見出しました。得られた結果の解析は、現在も続いており、インスリン抵抗性との相関因子の検出、慢性腎臓病とインスリン抵抗性との関連の発見、糖尿病早期予測因子研究への展開がみられています。本年は、65歳以上の方に調査をお願いしました。これは、②のアンケートに質問項目として挿入して実施しました。本調査は、留萌市が主体となり、NPO法人るもいコホートピアの研究理事(小海)がアンケート作成などに協力して実施し、市とNPOが一体となって行う最初の事業となりました。市とNPOが市民のためにともに働く形は、留萌市での調査研究のパターンになりました。
②高齢者生活ニーズ調査事業(連続横断研究):次期介護保険計画(平成24年度)の計画策定にあたり留萌市の65歳以上の方3000名を無作為抽出しておこなったアンケート調査です。解析は現在も続いています。1617名から返信を頂き回収率53.9%という高い回収率を得ました。これだけの大規模な高齢者対象の調査は留萌市初のもので、高齢者の生活、介護に対する要望、問題提起などさまざまな高齢者の実情が浮き彫りになることが期待されます。市と老人会の強力が大変有効でした。
③地域社会資源定点観測調査(連続横断研究):ここでいう社会資源とは、高齢者の生活に関わる行政に存在する疾病以外の情報を想定しています。調査結果を町内会別に収集し、留萌市の地図に載せました。図2は、留萌市の65歳以上の方の割合を町内会別にマップしたものです。港から町が起こり内陸部へ発展し、そのあとを追うように高齢化が進む様子が良く解ります。このようにひとつの市といっても、町内ごとに高齢化率は異なります。その理由を尋ね、近未来を予測しようという試みです。この調査には、国(陸運局)、北海道(保健所)、留萌市(市民生活部、健康福祉部、産業建設部、総務部)など省庁部署横断的な協力が必要でした。社会資源の情報は、行政に保存されていることが多く、このような情報の積極的な活用がのぞまれます。留萌市ではこれらの各部署が極めて協力的に作業をしてくださいます。大変ありがたいことです。私たちは、高齢者を支える要素(小中高生数、生産年齢人口、集会場、バス停、自家用車など)また支えられる要素(高齢化率、介護認定者数、医療費など)を定点観測する体制を敷いています。

図2

④眼底写真アドバイス事業(コホート研究):生活習慣病は、血圧・血液・腹回りの測定などから診断するのが健診のメニューです。しかし、眼底検査はこれらの生活習慣病を一度に診断することが可能なばかりでなく病気の段階まで知らせてくれるすぐれた検査です。旭川医大の吉田学長を中心とする眼科医達は、眼底撮影を定期的に市民に行い健康アドバイスを実施しています。この活動を継続して眼底写真のデータベース化による前向きコホート研究に取り組んでいます。市民には無料の眼底検査を提供し、研究者は貴重な情報を入手するという市民との協力の上に成り立つ上質な研究です。この研究を加速するためにNPO法人るもいコホートピアの看護師が自動眼底撮影装置を操作して研究の支援を行っています。るもい健康の駅に眼底撮影装置があるので、旭川医大の先生方は留萌に来なくても着々と研究が進むというわけです。眼底写真はメールに添付して送られ、それにもとづいた健康アドバイスがお返事として市民に伝えられます。その橋渡しも私たちNPOが取り持っています。
⑤住民健康情報電子化研究開発事業(コホート研究):上記の眼底の画像は、吉田学長が推進する健康情報電子化プロジェクト(ウエルネットリンク)のサーバーに保存されていきます。それらの情報は、ご本人はいつでも閲覧や変更が可能です。また、必要なときは医療者に開示することもでき、緊急時への応用などが期待されています。また蓄積されたデータは、他の研究者の研究支援にも使用されます。
地域連携クリティカルパス事業(コホート研究):脳卒中と認知症は、重度の要介護状態の2大原因を占めます。脳卒中の発症率を検出することのできる地域連携クリティカルパスは、地域の限られた医療と介護資源の有効利用と疾病の発症率の把握および転帰(再発など)の追跡を可能とする極めて強力なツールを提供します。この活動から留萌市での1年の脳卒中の発症率は全国平均の1.7倍あまりであることが判明しました。この結果を受けて、心房細動のスクリーニングを含めた健診メニューの開発に着手しました。調査研究で課題を抽出し、その課題に即座に対応する新たな研究活動を開始できたことをうれしく思っています。長い医療崩壊は、野放しの心房細動症例や高血圧症例をたくさんもたらしました。医師の数だけ揃っても医療の再生にはつながらないことを示しているのではないでしょうか。
⑦体質環境マトリックス研究事業(コホート研究):ゲノムコホートのパイロット研究です。
⑧情報ツール活用状況調査(横断研究):東京大学先端研の仲間と彼らが運営するNPOとのコラボ調査として留萌市での携帯電話、インターネットの利用実態を調査しました。アンケートの回収率は53.1%と高く、留萌市民の10.7%から回答を得ました。インターネットの普及状況を把握しました。
⑨数の子摂取と血中脂肪酸濃度に関する研究(介入研究):市内20代男性希望者を募って実施した介入試験です。留萌名産の数の子を毎日50g、1ヵ月食べていただきました。この試験では数の子食によるコレステロールの上昇は起こりませんでした。コレステロール代謝の視点から合理的な結果が得られました。
初乳摂取と生活習慣病に関する調査研究(横断研究、症例対象研究、介入研究):留萌振興局にできたプロジェクトチーム健康産業支援室とのコラボ研究です。留萌管内天塩町で牛初乳食経験と生活習慣病の関連を調査研究します。

(3)市民との接点

市民に正しく人に関わる研究を理解していただくことは必須要項です。そのために、各種講演会や勉強会を年60回以上実施しています。講師は、NPOのメンバーなどほとんどボランティアでお願いしています。
①健康よろず相談
留萌市立病院脳外科多田医師(NPO法人るもいコホートピア副理事長)が健康の悩みならなんでも相談に乗ります。無料です。健康に関する心配事を毎週木、土にお伺いします。
②健康啓発キャンペーン(ピンクリボン運動、ブルーリボン運動)
ともに生活習慣病であり、世界的な健康啓発キャンペーンとして展開されているピンリボン運動(乳がん啓発)とブルーリボン運動(糖尿病啓発)に連動した健康啓発活動を地域の保健所などと共同で年各1回各2週間程度実施しています。
③マンスリー健康講話
毎月第4土曜日は健康講話で勉強します。生活習慣病をさまざまな視点から解りやすく解説します。双方向性の質疑応答をいつもお受けします。
④基礎老年医学講座
老年医学を系統的に学ぶ講座です。半年12回が1単位です。わかりやすい老年医学の理解を目指した講座です。

(4)国・道・市との連携

①Bio-S:文部科学省のプロジェクトです。るもいコホートピア構想は、本プロジェクトの地域拠点形成事業として支援を受けています。
②道北地区政策展開方針への掲載:北海道は科学技術振興条例を日本で最初に制定しました。その政策展開方針にるもいコホートピアが掲載されています。
③留萌市総合計画への取込み:留萌市は総合計画のなかに留萌コホートピア構想の推進をうたっています。
④るもい健康の駅の土地と建物:健康の駅の建物は、延床面積705.96㎡の立派な建物です。北海道の研修施設として建設され、その後遊休化していました。北海道は、この建物をまるごと留萌市に移管しました。また土地は15年間無償貸与されているそうです。

3.人材育成のフィールド

(1)人材育成フィールドとして

良い教育は良い研究者によってもたらされるといわれます。医療とくに高齢者の健康に関する研究が日常的に展開されている留萌地域は、医療系学生や研修医にとって臨床疫学を現場で研修できる魅力的な地域です。このフィールドを使って学生、卒業生、市民が地域医療を学ぶ場を形成しています。
医療人育成事業:札幌医科大学および旭川医科大学の医療系学生が毎年医療実習に留萌を訪れます。留萌市では、単なる社会科見学から医療人の一環教育に貢献できる地域医療実習の支援をNPO法人るもいコホートピアと一体で推進しています。この活動には、北海道も側方支援で加わっています。地域のことを地域で学び、地域医療に貢献できる人材の育成を支援しています。全国からの研修をお待ちしています。
②地域医療再生セミナー:市民とともに地域医療を考える公開講座を1年に1回開催します。地域医療の専門家とのパネルディスカッションを行い、地域医療を市民が支える方策を検討しています。平成23年7月10日に北海道病院協会理事長をお招きして1回目を開催しました。当日は187名もの市民が参加して熱気を帯びた講演会になりました。
③医療介護職業紹介事業:地域に不足している医療職や介護職を中高生に紹介する事業です。現役の医師、看護師、介護支援専門員介護福祉士、薬剤師が具体的に仕事を紹介します。参加学生の質問も興味深い会になっています。各専門職年2回開催しています。市内の中学への出張も行いました。

4.おわりに

日本は清潔で豊かな国です。この国の発展を築いてくださった先輩がお年を召して、いま高齢者となられました。心からの感謝とお礼を申し上げたいと思います。高齢化問題などと言っている人もいますが、人は必ず年をとります。問題ではなく自然なのです。明日の自分のためにも、今のお年寄りの困りごとを軽減できる取り組みになればいいなと思います。るもいコホートピアは、そんな気分です。
小海 康夫(こかい やすお)
北海道公立大学法人 札幌医科大学医学部フロンティア 学研究所病態情報学 教授
特定非営利法人 るもいコホートピア 理事長
弘前大学医学部卒業、外科研修を経て、札幌医科大学医 学部病理学教室にてリンパ腫の客観診断の研究に従事、 その後米国ペンシルバニア大学医学部病理学講座に留学 し分子標的治療の研究に従事する。帰国後国立小児医療研究センター(現独立行政法人成育医療センター)病理研究室室長として分子 標的治療の研究を継続するとともに、難治性疾患のモデル作成の研究に従事す る。2003 年より札幌医科大学医学部教育研究機器センター分子機能解析部門 教授、2011 年機構再編により札幌医科大学医学部フロンティア学研究所病態 情報学教授。2009 年より特定非営利法人るもいコホートピア理事長。札幌医科 大学では分子生物学的手法を用いた疾病の診断治療の分子標的の探索と臨床応 用への研究に従事する。同時に北海道留萌市において、地域における地域のた めの研究を展開するフィールド「るもいコホートピア」の活動に参加する。研究活動として、橋渡し研究、コミュニティー研究、アクションリサーチを推進している。
社会活動
特定非営利法人 るもいコホートピア 理事長 日本病理学会 評議員 第 71 回日本癌学会学術集会 プログラム委員
関連ウエブサイト
札幌医科大学医学部フロンティア学研究所病態情報学 http://web.sapmed.ac.jp/bme/
特定非営利法人るもいコホートピア http://www.cohortopia.jp/index.html

サイト内検索