エネルギーと資源の自給率を上げる


「有限の地球」とは、それまで実質的に無限と言って良かった人類の生存基盤が、人類の活動の膨張によって明確に限界が見えてきたということである。幸いそれに対応する多くの分野において、日本は世界のフロントランナーであり、まさに課題解決先進国である。高いエネルギー効率、高い資源利用の効率、環境を破壊しない技術の集積、高効率を誇る上水システムなど広範な分野で日本の技術や社会システムは世界のトップレベルにある。
エネルギー問題と資源問題は実は不可分の関係にある。人類が20 世紀後半に使ったエネルギーは膨大なもので、そのほとんどが化石燃料、すなわち地下資源を燃やして得たエネルギーに依存している。1990 年頃の東西冷戦終結の後、新興国の経済発展はすざましい勢いで進み、21 世紀に入ってからは中国、インド、ロシア、ブラジルのBRICs における化石燃料の消費が急速に伸びている。そのため、資源の価格高騰、そして資源の枯渇、が懸念されている。また、資源問題の深刻さは、資源の偏在にあると言われており、石炭、石油、天然ガス、ウランなどエネルギー用地下資源の独占が国際政治問題になっている。ここでは、資源問題として、1)エネルギー用地下資源、と2)工業用地下資源、の2つに分けてプラチナ社会実現に向けた方策を議論していく。


1.エネルギー用地下資源の現状と課題

化石燃料を燃やして得られるエネルギーは重大な環境問題を引き起こしており、CO2 などのglobal warming gas 排出による地球温暖化が深刻な問題であると懸念されている。その対策として、CO2 排出がないグリーンなエネルギーとして1)原子力発電、2)再生可能エネルギーへの期待が高まったが、福島第一原子力発電所の事故を契機に「当面は原子力発電で凌いで、将来的には再生可能エネルギーに」というビジョンが見直されつつある。しかし、再生可能エネルギーが大きくもてはやされている中で、本当にプラチナ社会を実現する切り札となるのかについて、エネルギー効率、あるいはエネルギー収支の観点から考えて行く必要がある。
石油資源は後述するようにエネルギー効率が最も高いエネルギー源である。この石油資源の枯渇問題は1960年代末にローマクラブが「成長の限界」で警告したように、あと50年と言われていたが、ほぼ半世紀経過した現在でもあと50年と言われている。しかも最近の技術革新によってシェールガスやシュールオイルが使えるようになり、化石燃料の埋蔵量は急増し、あと200年は大丈夫、と言われるまでになってきている。
エネルギー自給率を上げるに当たって、考慮すべき課題として「エネルギー収支比率」がある。これは(ライフサイクル中に得られるエネルギー量)/(エネルギーを得るために必要なエネルギー投入量)で定義され、たとえば石油の場合には掘削に要するエネルギー量1に対して100倍のエネルギーが得られるので収支比率は100である。他のエネルギー資源についての試算(米国ケンブリッジ・エネルギー調査研究所など)によると、天然ガスで100、最近注目されているシェールガスで30、石炭の場合は50となり、圧倒的にエネルギー効率が良く、資源を無駄にしないエネルギーと言える。もちろんこれらのエネルギーを得るためには地球温暖化ガスであるCO2を大量に排出することになる。
これに対してCO2を排出しないグリーンなエネルギー源として原子力、風力、太陽光などがもてはやされているが、原子力ではエネルギー収支比率は20しかなく、風力発電では15、太陽光発電ではわずか5である。これは現時点の技術レベルにおける比較であるが、石油や天然ガスに比べて20倍も効率が悪い方式では結局資源の無駄遣いとなってしまう。さらに、電力の安定供給を担保するためには高性能な蓄電デバイスや燃料電池の開発が不可欠である。これらには多くのレアメタルが必要であり、たとえばLiイオン電池ではリチウム、コバルトやマンガンなどが不可欠である。燃料電池には本質的に遅い反応を加速させて大きな出力を得るために高性能の白金触媒が必要である。また高性能のモーターを作るには強力な磁石が不可欠で、ネオジウムNdやディスプロシウムDyなどの希土類金属(レアアース)が大量に使われている。
一方、2011年3月11日の東日本大震災によって引き起こされた福島第一原子力発電所の爆発事故によって、CO2を排出しないグリーンで安価なエネルギーと期待されていた原子力発電が実は5円/kWhなどではなく安全対策、廃棄物処理などの費用を含めるとその3倍以上のコストがかかることがわかりつつある。また今回の事故処理、賠償を含めると200円/kWhという試算もある。風力、太陽光などの再生可能エネルギーに繋ぐ役割として原子力に大きな期待がかかっていたが、そのためには相当の安全対策コストを覚悟して原子力を使う必要がある。核燃料のウランについては上記地下資源と同様、地球上に偏在しているが、最近の技術開発により海水中のウランを採り出すことが可能になりつつある。原子力研究開発機構ではウラン回収用のモール状捕集材としてポリエステル布に放射線照射してアミドキシム基の枝を生やしたものを作り、これを海水に浸すことで海水中のウランが捕集材に三炭酸ウラニルとして吸着し、それを焼いてイエローケーキにする技術を開発している。ウランの価格は他の希少金属も一緒に取り出すことで下げることが可能だと試算しており、1kg当たり1万6000円にまでなり、鉱山ウランの1万3000円/kgと比べても遜色ないと報告している。海水中には45億トンのウランが存在するため、資源のない日本にとってはまさに救世主のような資源であるが、エネルギー収支効率が1に遠く及ばない。
一方、海底に眠るエネルギー資源としてメタンハイドレートにも注目が集まっているが、100年分の天然ガスを取り出すエネルギー収支比率はやはり1に遠く及ばないため、本命とはなり得ていないのが現状である。
天然ガスは化石燃料の中でも最も効率の高いエネルギー資源である。燃料電池などで使われる水素ガスは自然界には存在しないため、水や炭化水素を分解して作る必要がある。人類がこれまで使ってきた燃料資源のうち最も水素対炭素比率が高いのは天然ガス(9割がメタン)で4対1と計算され、次いで多いのは2対1、石炭が1対1、木材が1対10である。

2.エネルギー用地下資源の自給率を上げる方策

方策としては、1)徹底した省エネ、節電努力、2)エネルギー収支比率の高い天然ガスにシフト、3)海水・海底のエネルギー資源の発掘と効率的利用、4)再生可能エネルギーの開発(エネルギーコストの低減)の4つが挙げられる。
このうち最も現実的な方策は2)エネルギー収支比率の最も高い天然ガスを資源として開発することである。天然ガスは地中3000メートル以深の地層で見つかっている。従来は1000~3000メートルに存在する石油資源とともに探索されていたが、深度を下げることで、非在来型天然ガスが見つかる可能性も高くなる。その代表がシェールガスで、また炭層メタン(CBM)やタイトサンドガスも非在来型である。世界36ヵ国(アメリカ、オーストラリア、カナダ、ブラジル、中国、インド、南アフリカなど)の可採資源量は約170兆立方メートルと試算されている。ここには中東や急ソ連が含まれていないので、これらを合計すると400年程度の世界需要を賄える量になる。しかし、シェールガスを掘り出すためのエネルギーがかかりすぎるために現在の技術ではエネルギー収支比率が30と低くなっている。これを3倍程度向上させる必要があり、ここに日本の技術開発力を発揮する場がある。現在は石油掘削に使われている水圧破砕法を中心にした手法を応用し、水圧のかけ方、支持材の挿入方法などのノウハウとスーパーコンピュータを駆使した精密地震探査結果による微細なコントロールが行われているが、さらなるコスト削減が可能な分野である。一方、CBMについては、採算が悪くて廃鉱になった国内の炭坑(北海道や九州)で新しくCBM資源となる可能性も出て来つつある。北大の調査結果によると、国内で400億~1500億立方メートルのメタンガスを採取可能とのことである。
日本には天然ガス開発に長年携わって優れた技術を蓄積している企業が多い。外国の天然ガス鉱床スイートスポットに焦点を定めて、この技術蓄積を生かしてバーゲニングパワーを発揮すれば、日本にも大いにチャンスが生まれる。
次に、3)海水・海底資源の活用を進めることである。メタンハイドレートについては今後の技術革新が必要である。また、海水中には多くのウランが溶け込んでおり、これをエネルギー資源にすることでエネルギー問題が解決すると期待されている。ただし、福島第一原子力発電の爆発事故を受けて、脱原子力の方向が模索され、原子力エネルギーは大きな危機に直面している。しかし、当面のエネルギー危機を乗り切るには「原子力とは非常に危険なものを人類の叡智で使いこなす技術である」という認識を持つことが重要である。厳しいストレステストをくぐり抜けた発電所のみに運転再開を許可することでここ20年を乗り切り、次の再生可能エネルギーに繋ぐことが求められている。現状では国民の原子力アレルギーがピークに達しているため、時間をかけて科学的データに基づく冷静な議論を積み重ね、国のエネルギー政策に関する国民的合意を得る努力が必要である。海水中には1リットル当たり3μgのウランが含まれている。日本原子力研究開発研究機構では前述のように特殊なポリマーに放射線照射をして加工したものを用いて海水中のウランを吸着させ、それを焼いてイエローケーキ(ウラン酸化物)を作る技術を開発している。ただし、今後は放射線廃棄物処理施設の充実を含め、総合的な対策が必要である。
また、本命である再生可能エネルギーの開発については、現状ではエネルギー収支比率が低すぎるという問題がある。したがって、現在のコストは太陽光発電では49円/kWh、風力10~14円/kWh、水力8~14円/kWh、地熱8~22円/kWhと競争力がない状況にある。太陽光発電では量子ドット構造を使ってサブバンド間遷移によって赤外光までを利用すれば現在約40%である最高量子効率を75%にまで向上させることが可能である、という理論計算結果が報告されており、さまざまな技術革新によってエネルギー変換効率の飛躍的向上を図ることが最も重要な課題になる。

3.工業用地下資源の現状と課題

我々の身の回りの工業製品はほとんどが地下資源を原料としている。鉄やアルミ、銅などの金属は近代社会の構造物、インフラを構築する重要な物質だが、地殻存在度が大きいため、メジャーメタルと言われている。一方、埋蔵量が少ない金属は産業のビタミンとして重要なものが多く、31種類の金属はレアメタルと呼ばれている。これは和製英語で、英語圏ではマイナーメタルと呼ばれている。
アフリカにおける内紛の原因となる金属で、スズ、金、タンタル、タングステンの4種類の鉱物を「紛争鉱物」(Conflict mineral or conflict metal)という。この他にさまざまな重要希少金属は地球上に偏って埋蔵されているため、国際政治上の紛争の火だねとなっている。鄧小平は「中東に石油あり。中国に希土(類金属)あり」と言ってレアアース(Rare Earth: RE)を将来の国際政治力学の手段にしようとしたが、現在はまさにその通りの状況になっており、レアアースの暴騰を招いている。
具体的にどのようなレアメタルが産業に用いられているかを見ると、グリーン・イノベーションで必要とされるものとして、次のようなものがある。

 太陽電池:Ga, As, In, Cd, Ru
 燃料電池:Pt, Ru, La, Ce, Gd
 二次電池:Li, Co, Ni, RE
 熱電素子:Bi, Te, Co, Sb
 強力磁石: Dy, Nd, Sm, Co, B
 電子部品:Ag, Au, Pd, Rh, In, Ta, W, Ni
 発光デバイス:Ga, In, La Eu, Y
 環境触媒:Pt, Pd, Rh, RE

これらレアメタルは国際紛争を巻き起こすだけではなく、資源枯渇という深刻な問題を引き起こす。これには埋蔵量という供給側の問題だけではなく、むしろ需要側の事情が大きく影響する。一般に、量的要因、地政学的要因、エネルギー要因、環境要因の4つが資源制約要因となる。量的要因については需要が伸びて静的耐用年数が減少するが、掘削の技術革新で埋蔵量が増える、など変動しうる。地政学的要因は資源の偏在により内紛や価格の高騰、独占などを招く。日本の産業は常にこの要因に翻弄されてきた。エネルギー要因は有用な金属を取り出すのに必要なエネルギー量で、日本では技術革新が進み、省エネルギーで精錬できるようになってきたが、その技術もエネルギー資源価格の安い国に流れている。また環境要因は産業廃棄物処理コストが関係してくる。今後、BRICsをはじめとする開発途上国の需要が急上昇するとともに、日本にとって、いや地球にとっての持続可能性が大きく脅かされることになる。2050年にはFe, Mn, W, Co, Pt, Pdなどは現埋蔵量をほぼ消費され尽くしており、Ni, Mo, W, Li, In, Gaなどは現埋蔵量の倍以上を消費しており、Cu, Pb, Zn, Au, Ag, Snなども危険水域に入ると予想されている。

4.工業用地下資源の自給率を上げる方策

いずれにしても日本にとって資源問題は将来にわたって続く不可避の課題である。これを解決する道は、新しい資源の発掘、特に海水中・海底資源の開発、使用量削減(効率化あるいはリサイクル促進)、代替金属の開発の3つしかない。
新しい資源の発掘については、海水中・海底資源の開発が鍵を握るものと思われる。日本は国土自体としては狭いものの世界第5位の面積の海を持っているため、たとえばリチウムイオン二次電池用リチウムなどは大量に海水から取り出すことが出来る。ボリビアやチリに偏在しているリチウムは海水1リットル中に0.17mg含まれている。これをマンガン系吸着剤で炭酸リチウムを回収し、塩化リチウムの形で取り出す技術が開発されている。現状では輸入リチウムの数倍高価であるが、今後の技術革新で克服することが必要である。
次に、使用量削減、リサイクルについては資源を有効利用する最も直接的な方策である。地下資源はほとんどすべてが熱力学的に安定な酸化物の形で埋蔵されているため、精錬によって金属にするにはかなりのエネルギーが消費される。特に、酸化物の生成自由エネルギーが大きな金属、たとえばアルミ、マグネシウム、チタン、シリコンなどでは大量のエネルギー投入が必要である。しかし、金属製品を溶融して再利用するには融点まで加熱すればよく、消費するエネルギー量は数分の1で済む。
今後の日本が生き残る道として、代替金属の開発について前述の太陽電池用、燃料電池二次電池熱電素子、強力磁石、電子部品、発光デバイス、環境触媒について代表的な代替金属の開発例を示し、今後の展望について議論していく。
燃料電池では比較的低温で水素の酸化による水生成反応を引き起こすため、大量の白金触媒を必要としている。白金は南アフリカとロシアで9割以上を産出する戦略物質であり、5000円/g以上の高価な貴金属である。Pd, Rhなどと同様、局在しやすいd電子がフェルミ準位直下にぎっしり詰まっているため、酸化、還元触媒としてきわめて有用である。この代替金属として層状グラフェンに窒素を添加して電子状態密度を向上させた炭素触媒に大きな注目が集まっている。カーボンナノチューブやナノシェル構造などさまざまな構造の炭素触媒が白金に迫る性能を示しており、スーパーコンピュータを用いた第一原理計算やSPring-8の高輝度放射光を用いた解析によりその反応活性点はグラフェンのジグザグエッジの凹部を窒素置換した構造であることが見出されている。すなわち、s,p電子しかないのにd電子のようにフェルミ準位直下の電子状態密度が大きくなっていることが鍵であることが分かってきた。このように、最先端の解析技術とスパコン計算から新しい代替物質の設計・合成が生まれつつある。
リチウムイオン二次電池に用いるリチウムはイオン半径が小さいため移動度が大きいが、地球上ではボリビアなどに偏在しており、価格が急騰している。この代替としてナトリウムや2+イオンであるマグネシウムに注目が集まっている。しかし電解質や正極・負極活物質の設計に工夫を凝らす必要があった。リチウムイオン二次電池の正極物質としてLixCoO2が使われていたが、コバルトは希少金属であるため、その代替として鉄が候補となり、安定性と電圧向上のためリン酸鉄が有望視されている。これについても第一原理計算でLiイオン挿入・脱着における構造安定性、電子状態変化が評価され、放射光を用いた解析が行われており、新しい代替金属として開発が進められている。
廃熱で発電する可能性を秘めている熱電効果素子には、現在ビスマス・テルル、あるいは鉛テルルが使われている。これを代替するにはゼーベック係数が高く、電気伝導度が大きく熱伝導度が小さな材料が必要である。そこでNaxCoO2層状化合物に注目が集まっている。これはCoO2相が電子伝導を担い、ナトリウムが格子振動を制御して熱伝導度を抑える役割を果たしている。Coは希少金属であるが、この原理を応用すれば新しい代替材料の開発は充分可能である。
液晶ディスプレー用の透明導電膜には従来ITO(インジウムースズ-酸化物)薄膜が使われていたが、希少金属であるインジウムの価格が急騰している。ITOはIn2O3という3価のInからなる絶縁物に4価のSnを添加することでバンドギャップを持つn型縮退半導体となったもので、可視光は透過するが伝導帯に存在する多くの電子によって金属伝導を示す物質である。基本的にこの電子構造を持つ物質が代替となりうるわけで、酸素欠損のあるスズ酸化物SnO2-δ薄膜は大きな候補になりうる。しかし、スズ自体も希少金属なので、ありふれた元素での透明導電膜形成が望まれていた。東工大細野らはセメント材料のCaOとAl2O3を12対7で混ぜて、[Ca24Al28O644++2O2-のフリー酸素イオンを水素マイナスイオンH-で置換することで電子伝導性を持った透明導電膜を実現している。電子があたかも結晶の一部に成った構造なのでエレクトライドと名付けているが、バンドギャップ約6eVを持ちながらフェルミ準位に小さな伝導帯を持っていることが証明されている。放射光を用いた解析でこの構造が実証されている。これは空隙のコントロールで電子の道を作った新物質である。
動力関連として強力磁石Nd-Fe-Bの例を示す。これは従来の最強磁石Sm-Co磁石(4f-3d相互作用を利用)を大きく凌駕した磁石であるが、高性能化にはNdやDyが不可欠であった。しかし、このDyの役割を詳しく解析した結果、結晶に異方性歪みを与えることで磁石サイズを小さくして結晶磁気異方性を強くする働きがあることがわかった。そこで、銅を添加することで結晶粒界にNdリッチな相とNd2Fe14B相との界面が安定化して磁石サイズの成長を抑えることが出来、中国に偏在しているDyを使わなくてもいい技術が開発されつつある。
以上、代替金属の可能性を見てきたが、その研究方向は以下の通りである。
1)なぜ希少金属が必要かについて、その機能・役割を電子構造、結晶構造、組織構造から解明して代替金属を開発している。
2)ありふれた元素からなる物質のナノ構造化によって元素(物質)固有の特性を凌駕する特性を引き出している。
3)上記開発戦略にスパコンや高輝度放射光、三次元TEM、三次元アトムプローブなどを駆使しており、これが日本のものづくり技術の大きな強みとなっている。
要するに、国を支えるのは地下資源ではなく人的資源であり、知的資源が最も重要である。「日本は資源小国で中東や中国の圧力の前には風前の灯火」などという悲観論はまったく当たらない。人的資源を育て、知的財産を確保し、国際政治におけるリーダーシップ、バーゲニングパワーを磨いていけば、プラチナ社会の実現は充分可能である。

参考文献
[1]原田幸朗、河西純一「動き出したレアメタル代替戦略」B&Tブックス 日刊工業新聞社、2010年
[2]小宮山宏、竹内和彦、住 明正、花木啓祐、三村信男編「サステイナビリティ学3資源利用と循環型社会」東京大学出版会、2010年
[3]朝日新聞2009年8月11日 朝刊
[4]選択、2011年 1月号「世界の「産油国勢力図」が一変へ」、2011年7月号「再生可能エネルギー「期待過剰」の愚」
[5]田中一義、東原秀和、篠原久典編「炭素学」化学同人、2011年
尾嶋 正治(おしま まさはる)
東京大学大学院工学系研究科 応用化学専攻 教授
東京大学工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科合成 化学専攻修士課程修了後、日本電信電話公社武蔵野電気 通信研究所入社。NTT 研究所放射光研究グループリー ダー。Stanford 大学客員研究員(1981 ~ 1982)。1995 年に、 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻教授。2011年度応用化学専攻長。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システ ム科学系(化学)教授を兼務(2001 年~ 2010 年度)。2006 年から東京大学放射光 連携研究機構・機構長。2009 年から日本放射光学会会長(2 年間)。2011 年か ら日本表面科学会副会長。
専門分野は、半導体表面化学と放射光科学。具体的には省エネルギー型新型素 子の開発や、酸化物半導体の結晶成長とその解析手法の開発、固体高分子形燃 料電池電極触媒の研究に従事。
主な著書
尾嶋正治編著「極限状態を見る放射光アナリシス」日本分光学会、学会出版センター 2002年
放射光学会編「放射光で光物質のしくみ~ナノテクから生命・地球の起源まで ~」講談社ブルーバックス 2011年
経歴・業績詳細
URL:http://www.oshimalab.t.u-tokyo.ac.jp/

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